視覚/知覚感情(固有感情)

知覚感情の代表的なものは、寒暖感や膨張・収縮感などです。私たちは、色を視覚でとらえているにもかかわらず、色を見て皮膚で感じるような寒暖感を生じさせています。実際にはない暖かさや冷たさを色から感じているのです。

一般に、赤や橙系統の色には温かさを感じ、「暖色」と呼びます。これに対して、青系統の色には冷たさを感じ、「寒色」と呼びます。そしてどちらにも感じられない色は、「中性色」と呼びます。色の寒暖感は、人間の歴史的な経験から呼び起こされると考えられています。暖色は炎や太陽を連想させ、そこで体感した暖かさを呼び起こし、寒色は水や海などを連想させ、そこで体感した冷たさや寒さに結び付くのです。

実際に、同じ間取りの部屋を使用し、すべて暖色のインテリアにまとめた場合と、全て寒色のインテリアでまとめた場合では、暖色の方が、部屋の体感温度が2~3度高くなったという実験結果があります。冷え性の方は、体温調整に色を有効活用してみるのも良いでしょう。

また、膨張・収縮感では、明るい色は膨張し、暗い色は収縮して見える特徴があります。その効果を実際に考慮したものに、囲碁の碁石があります。囲碁は基盤の上に白と黒の碁石が隣接して置かれますが、白は膨張色、黒は収縮色であるため、白と黒の碁石が全く同じ大きさであれば、白の碁石の方が心理的に若干大きめに見えてしまいます。従って、ほとんどの碁石は、白の碁石の方をほんの少し小さめにつくり、心理的に同じ大きさになるように工夫されているのです。色の膨張・収縮感は、服に取り入れることで体型カバーにもつながります。

 

日本成人病予防協会 総務省認証 学術刊行物より