嗅覚/においを伝える二つの道

においを伝える二つの道

においの伝わり方には二通りあります。一つは、鼻からの吸収を介して、空気中のにおい物質を感知するルートです。

もう一つは、食べ物や飲み物を摂取するときに、それに付随して喉の奥から鼻に抜け、嗅上皮に達したにおい物質を感知するルートです。

私たちは、味覚だけで食べ物のおいしさを感じていると思っている人が多いと思いますが、実は「おいしさ」を決定しているのはにおいだともいえます。鼻が詰まっていると、におい物質が嗅上皮まで届かなくなり、においが認識できないため、おいしい料理も無機質なものに感じてしまいます。それは、人間の持つ特殊な喉の構造が関係しています。

人間の喉は、鼻から肺への気道と、口から食道への道が喉で交差しており、言語の獲得とともに他の霊長類よりも声帯の位置が下がっています。そのため、食べ物を飲み込むと同時に息を吸えないという特徴を持ちます。喉から鼻に抜ける香りで感じる食べ物のおいしさは、人間が嗅覚から受けている一番の恩恵だといえます。

二つのルートを通って入ったにおいは、鼻腔の天井部分の嗅上皮に感知され、嗅上皮にある嗅細胞がにおいの情報を電気信号に変えます。そして、電気信号は嗅神経を通って脳へ伝わっていきます。

 

     日本成人病予防協会 総務省認証 学術刊行物より