体性感覚野は、皮膚感覚の厳密な地図のようになっており、全身の皮膚のうち、どの部分からの信号なのかを感知することができるようになっています。
さまざまな信号が脊髄などを経て到着する脳の領域は、皮膚の大まかな対応関係を保っており、それを表す絵が、カナダの神経外科医であったワイルダー・ベンフィールらによる「脳内の小人」です。ベンフィールらは、脳の病気であるてんかんの患者たちを手術する一環で、体性感覚野などを電気刺激したときにどのような感覚が体験されるかといった反応を調べ上げ、1945年に報告しました。
ベンフィールが診た患者らは、脳を刺激されたとき、「しびれ感」や「ちくちくする感じ」などを体験したといいます。また、別の研究者が手法を改善して行た実験では、被験者は「紙をつまんだときのような感じ」がしたり、「温かさや冷たさ」を感じたりしたというのです。いずれの例でも、皮膚に何かが触れていなくても、ある種の皮膚感覚が体験できたことが分かります。つまり、皮膚感覚は、皮膚よりむしろ脳内で引き起こされているのです。
皮膚感覚の信号は、手、足、胴体など体の異なる器官からの信号がそれぞれ対応する脳の部分に届きます。図をみると、例えば、胴体に比べて手の平に割り当てらえている面積は広いことが分かります。繊細さが求められたり生存に重要な器官の感覚情報は、脳でより多くの神経細胞を使って優先的に処理されているのです。「脳の割り当て量」の違いは、届く感覚情報の多さや重要性に応じた結果です。
日本成人病予防協会 総務省認証 学術刊行物より