触覚/痛みの正体とは

痛みの信号が脳まで伝わる道筋
痛みの信号が脳まで伝わる道筋

頭を叩かれた場合と手の平を叩かれた場合とでは、同じ強さでも痛みの感じ方が違います。単なる刺激の強さでは痛みを説明することはできません。痛みを感じる大きなポイントは感情であり、痛みには基本的に不快な感情の動き(情動)が伴います。つまり、痛みとは「どこにどのような大きさの刺激が入ったのか」という感覚と、「苦しい、不快だ」という情動の2つの要素が合わさって成り立ちます。図をみると、例えば、手を切った時の痛みの信号は、まず手の先から伸びている神経を通り、脊髄に入ります。その後、痛みの感覚を伝える神経は、脳の「視床」という部位を通り、大脳皮質に至ります。こうして私たちは、傷ついた場所や傷の深さを感じ取ります。一方、痛みという感情を伝える経路は、さまざまな神経を通って情動をつかさどる脳の大脳辺縁系に至ります。そして、これまで経験した痛みの記憶と照らし合わせ、不快な気持ちが沸き上がるのです。このよに、痛みの正体とは、脳が生じた主観的な感覚と情動が合わさったものなのです。

自分の中で痛みの感じ方が変わることもあります。ボクサーが試合中、極度の興奮状態のためにパンチを浴びても痛みを感じなかったが、試合が終わってから強い痛みに襲われたという話を聞いたことはないでしょうか。このように、刺激が強いからといって、痛みも同じように強いとは限らないのです。逆に、刺激が弱くても、強い痛みを感じることもあります。

日本成人病予防協会 総務省認証 学術刊行物より