触覚/慢性痛

これまでみてきたような痛みは、組織が傷ついたと同時に感じ、傷が治ると消えるため「急性痛」と呼ばれます。しかし、これらのしくみでは説明できない痛みがあります。それが「慢性痛」です。

慢性痛とは、慢性頭痛や慢性腰痛などのように、もともとの痛みの原因である部分の症状が治まっても痛みが続く現象です。なお、がんや関節リウマチによる痛みは、痛みが続く点では慢性痛と似ていますが、常に患部で炎症を起こし続けているため、持続性の急性痛呼ばれます。

なぜ、慢性痛では痛みがないのに痛みが残るのでしょうか。そして、この感覚は気のせいではなく、本当の「痛み」といえるのでしょうか。

傷があってもなくても、急性痛で生じているのと同じように脳が活動しているのであれば、それらの痛みを区別することできません。慢性痛の原因は非常に複雑で、いまだ不明な点が多いのです。さらに、長引く痛みに苦しむ患者を取り巻く環境や精神的ストレスにより、さらに痛みが悪化するため、治療が大変難しいとされています。

痛みが長期化する原因の1つに、「快感を感じる脳の部位の働きが低下している」というものもあります。人は快感を感じることで、生き生きとした生活を送ることができます。しかし、慢性痛に苦しむ患者はこの快感を感じる脳の部位の働きが低下し、不快な痛みを常に感じていると考えられます。

快感を感じる脳の部位の働きを回復させることができれば、痛みは消えなくても、通常の生活を取り戻すことができる可能性があるといわれています。

 

日本成人病予防協会 総務省認証 学術刊行物より