かゆみは、「引っ掻きたくなるような不快な感覚」と定義されますが、実は、かゆみは体を守る防衛反応の1つなのです。皮膚に異物がついた際に、かゆみを感じることによって、異常が起きている場所を私たちに知らせ、その異物を掻いて取り除こうとする行動を起こすのです。
かゆみは、「痛みの神経が感じる弱い痛みがかゆみである」と考えられていました。確かに両社は似ている点があり、皮膚の痛点に弱い電気信号を与えると、かゆみが感じられます。このように、かゆみを弱い痛みの感覚として考えることは一見正しいように感じますが、近年の研究では、かゆみは「掻く」行動を生じるのに対し、痛みは「回避」の行動を生じることや、強いかゆみは痛みにならないことなどから、痛みとかゆみは異なる感覚だと考えた方が正しいとされています。また、伝達回路にも少し違いがみられます。痛みとかゆみの経路は同じ脊髄視床路であり、脳のかゆみを感じる部位も、痛みを感じる部位もほとんど同じですが、かゆみの場合は視床での反応がみられないことが分かっています。それらのわずかな違いが、両者の感覚の違いを生み出しているのです。
日本成人病予防協会 総務省認証 学術刊行物より