触覚/掻けば掻くほど・・・

なぜ、掻くとかゆみが和らぐのでしょうか、掻くということはかゆいという不快な感覚に拮抗する刺激を与えることです。掻くことは、すなわち痛みを与えることであり、人の体はかゆみか痛みのどちらか強い方の感覚だけを感じるようになるために、かゆみが感じられなくなるとされています。

しかし、掻くとかゆみが和らぐ場合だけでなく、逆に掻けば掻くほど余計にかゆくなってしまうこともあります。通常は、掻くことで痛み刺激を与えるためにかゆみが和らぐのですが、アトピー性皮膚炎患者のように、慢性的にかゆみに悩まされている場合、掻くことは痛み刺激にはならず、それどころか、掻くことでさらにヒスタミンが分泌されてかゆみを強くしてしまいます。さらに、掻いて表皮を傷つけてしまうと、表皮のバリア機能が失われて、わずかな刺激にも敏感になり、微生物などが入りやすくなってしまいます。すると、表皮からサイトカイン(炎症反応を引き起こす物質)などが分泌されるようになり、さらに皮膚の炎症が悪化し、かゆみが増すのです。

また、アトピー性皮膚炎の場合は、脳レベルでの変化までも起こっていることがあります。例えば、普通なら痛みと感じるような刺激や熱も、脳がかゆみとして判断してしまうのです。そのため、アトピー性皮膚炎患者は、日常経験するさまざまな刺激によって、あらゆる部位でかゆみが現れてしまうのです。

日本成人病予防協会 総務省認証 学術刊行物より