どうしてくすぐったいという感覚があるのでしょうか。くすぐったさは、人だけではなく他の動物でも感じられる感覚です。動物の進化の過程で「痛み」から「かゆみ」が生まれ、そしてさらに派生的に進化して生まれたのが「くすぐったい」だといわれています。
くすぐったさの特徴は、他人からくすぐられる必要があることです。これについては、古くはアリストテレスが論じています。自分で自分をくすぐってもくすぐったくないのは、自分でくすぐっているのを知っているからです。他人からくすぐられるとくすぐったく感じるのは、くすぐられるのを予期できないからだとしています。物理的には全く同じ刺激を与えているにもかかわらず、自分でくすぐってみると意外なほどくすぐったくありません。自分でくすぐってみて笑い声をあげる人はほとんどいないのです。
その理由は、脳の働きにあります。人にくすぐられるときには、くすぐられた部位の触覚や圧覚などの刺激情報が脳の体制感覚野に達し、くすぐったさを感じます。ところが自分で自分をくすぐった時には、小脳から自分の指を動かす指令が出ると同時に、体性感覚野へ感覚を抑制する命令がいきます。なぜ抑制する必要があるのか、それは、くすぐったさは元々、虫や寄生虫など外からの刺激を感じるためのものであるため、自らが生み出す刺激とは区別する必要があるからです。
日本成人病予防協会 総務省認証 学術刊行物より