触覚/内臓感覚のしくみ

空腹やのどの乾き、吐き気、尿意や便意などのさまざまな感覚は、内臓から発生した信号によってもたらされる感覚です。これらの感覚や内臓痛をまとめて「内臓感覚」と呼びます。

内臓感覚は臓器に分布している受容器で感じ取っています。例えば、内臓を動かす平滑筋の中や、心臓の壁をつくる心筋、内臓の粘膜などにある受容器が発痛物質の発生を感知したり、臓器の動きによって圧力を受けたりすることでもたらされます。内臓は、皮膚よりも神経が少ないため、どこが刺激されたという感覚はあまりなく、消化器にメスを入れたとしても痛覚は生じません。内臓痛は皮膚の痛みとは違い、非常に限局した障害では起こらず、臓器が広範囲に損傷を受けた場合に感じられます。内臓痛は、内臓平滑筋が痙攣(けいれん)を起こして強く収縮・伸展されたとき、また、内臓に酸素や栄養素を送る血管が循環不全を起こしたときに生じます。

痛みは神経を通って脊髄から脳へ伝えられますが、その際、皮膚の特定の部分に不快感や痛みを感じることを「関連痛」といいます。例えば、肝臓疾患のときに右肩、心臓疾患のときに左上腕に痛みや不快感を感じることがあります。これは、脊髄で内臓からの感覚神経と皮膚からの神経が集まり、大脳皮質へ伝達される際、脊髄において内臓神経痛を皮膚からの痛覚刺激として認識するからです。関連痛は内臓疾患の診断に非常に重要です。

日本成人病予防協会 総務省認証 学術刊行物より