触覚/触れることが育む心

人の受精卵は、受精後10週を過ぎるころには、脊髄の神経細胞が手足の先まで伸び、18週を過ぎると脳の体性感覚野につながり、感覚が生まれていると考えられています。このころから、胎児は指しゃぶりを始めます。それは、セルフタッチの原型ともいえる行為で、体の感覚によって自らの体を知る行為です。

さらに、生後2か月を過ぎたことろから、体のさまざまな部位を触って探索するようになります。仰向けになって足を触ったり、足を口に入れたりすることもあります。特定の指を舐めることで、それまで1つの塊として感じていた指の感覚が分離し、それを思いのままに動かせるようになることを促進します。

そのようにして、何かに触れるとさまざまな感覚が生まれます。それらは、単純な生理的レベルで感じられるものから、複雑な心理的影響を受けるものまで多彩です。特に、心理的な影響が大きい「痛み」「くすぐったさ」「気持ちよさ」の3つは、心を育むために極めて大切な感覚だといえます。

これらの皮膚感覚は、ある程度は生まれつき備わっていて、感情と直結していて本能的な行動を生み出します。例えば、痛みは、危険を察知し他人の痛みに共感するために必要な感覚です。また、くすぐったさや他人に触れる気持ちよさは、幼少期のスキンシップなどで形成されます。幼少期のみならず、将来の対人関係や、心の健康にも影響を与えることが研究で分かってきました。

また、健常群と心療内科の外来患者(抑うつや不安の高い患者)群とで、子どものころに親からどの程度のスキンシップをされたかを比較した調査では、心療内科の患者は健常者よりもスキンシップが少なかったということが分かっています。このように、子どものころに親とどれだけスキンシップをしたかは、意識してなくても、将来に渡ってその人の心に影響を受けるといえます。

日本成人病予防協会 総務省認証 学術刊行物より

 

ホーム