スポーツ心臓

スポーツ心臓とは、マラソン選手などの持久系アスリートが継続的なトレーニングを行うことで心臓が鍛えられ、特に左心室壁の肥大や左心室の拡張により心臓の構造と機能が変化し、心臓が肥大するといいます。この現象は、病的なものではなく、継続的な激しいトレーニングに対する適応現象と考えられます。

スポーツ心臓では、心拍出量の増加により、一度に多くの血液を送り出せるようになるため安静時の心拍数は減少します。しかし、トレーニングをやめるとスポーツ心臓の特徴は徐々に消えていき、心臓の大きさと心拍数は一般の人と同程度までゆっくりと戻っていく傾向があります。この過程には数週間から数カ月かかるといわれています。持久力を長時間維持するためには、高度なトレーニングの維持が重要となります。

●マラソンによる血液分布量の変化

血液はさまざまな臓器に過不足なく分配され、酸素を供給していますが、マラソンをすると活動筋における酸素利用が増加するため、血液の分配量が変わります。

運動すると交感神経が活発になり抹消の血管が収縮します。それにより、特に内臓は運動開始時に急激な血流の減少が起こります。一方、活動筋も交感神経に支配されているため血流減少の方向に向かいますが、活動筋の血管では筋肉収縮により産生された代謝物(水素イオン、カリウムイオン、一酸化窒素など)の影響が優位になるため、血管拡張が起こり、血流が増加します。その結果、安静時での筋肉への血流は心拍出量の約15%にすぎなかったものが、マラソン中は活動筋への血流が、最大約85%まで増加し、運動中の活動筋の働きが維持されています。その分内蔵の血流量は大きく減少するのです。

 

 ※ランニング、ジョギングを含め「走ること」を総称して「マラソン」という表現を使っています。

日本成人病予防協会 総務省認証 学術刊行物より