なぜ高地トレーニングをするの?

 <高地トレーニングとは>

高地トレーニングとは、気圧が低いつまり酸素量が少ない環境でのトレーニングにより、人間の環境への適応能力を活かし、運動能力向上につなげる方法です。高地トレーニングの特徴は、低酸素状態により、安静していても酸素を運搬するための赤血球及び赤血球の中で酸素と結びつくヘモグロビンが増産されるというところにあります。

<高地トレーニングによる体の変化とメリット>

血液は、赤血球、白血球、血小板、血漿などの成分から構成されています。

その中で、酸素運搬という重要な役割をしているのが、血液の40%近くの体積を占める赤血球(ヘモグロビン)です。高地では酸素濃度が薄いため、体内の酸素濃度も一時的に低下してしまいます。体内の酸素濃度が低下すると、酸素を十分に行き渡らせるため、私たちの体はその環境に適用しようと働きます。その際に重要な働きをするのが腎臓から分泌されるエリスロポエチン(EPO)というホルモンです。

エリスロポエチンは、赤血球の増加を促す働きを持っています。高地での血中酸素濃度の低下を感知すると、骨髄細胞を刺激して赤血球(ヘモグロビン)の増加を促します。赤血球数の増加により、体内での酸素運搬能力が向上し持久力の向上がみられるのです。

 

 

 

<環境と日数>

一般的に、高地トレーニングに用いる標高は、1000~3000mの範囲です。しかし、初めて高地トレーニングを実施する人や、体の成長途中である中高生などの場合は、環境への適用能力を考えて、1000~1500mで行われるのがよいといわれています。選手の能力や目的によっては3000m以上の高地を選ぶ場合もありますが、高い標高でのトレーニングを継続すると、体に負担がかかりすぎてしまい、逆にパフォーマンスを低下させてしまうことがあります。過度な低酸素状態では、体内の細胞が正常に機能しなくなり、気分が悪くなる、意識がもうろうとするなどの症状が現れ、トレーニングどころか、身体を壊すことにもなりかねません。これがいわゆる高山病です。

そして,高地トレーニングをする上では、滞在する日数も重要になります。高地トレーニングによって分泌されるエリスロポエチンは、高地滞在の2~3日間に急増し、血液中の赤血球(ヘモグロビン)を増加させます。高地滞在期間は3週間以上が理想といわれていますが10~14日間の短い期間での高知トレーニングを繰り返すことも効果が期待できます。高地順応は個人差が大きく、体への負担を考慮する必要があるため、初めての場合は比較的短い期間で行うことが良いでしょう。ちなみに、赤血球の寿命は120日程度なので、高地でつくられた赤血球(ヘモグロビン)はその間、アスリートの持久力を支えることになります。

これが、マラソン選手が高知トレーニングをする理由です。また、ミトコンドリアの増加や機能の向上は高知トレーニングによっても起こります。高知トレーニングは体の機能向上と同時に、負荷のかかるトレーニングであるため、本人の身体能力や健康状態に応じて、専門家の指導のもと、無理なく行うことが大切です。

 

 

日本成人病予防協会 総務省認証 学術刊行物より