<内臓活性化>
体幹には、心臓や肺、胃、肝臓、腎臓、小腸、大腸など、人間の生命活動を維持する上で重要な臓器が集約されています。これらの臓器は、体幹にある様々な筋肉によって支えれ、それぞれの機能を果たしています。そのため、体幹を鍛えることは、内臓を正しい位置に保持し、内臓の活性化にもつながります。
内臓が活性化すると、例えば、小腸、大腸の機能が向上した場合、栄養の吸収が高まり、ポッコリお腹や便秘の予防、免疫力向上、大腸がんの予防などが期待されます。
<パワーを生み出し、疲れにくい体をつくる>
私たちがスポーツや運動を行うときはもちろん、日ごろ行う何気ない生活動作においても、手や腕、足を使っているという感覚がありますが、実は体の中心であり土台である体幹やコアが、動くパワーを生み出す原動力になっています。そのため、ピラティスにより体幹やコアを鍛えると、効率よく大きな力を生み出すことができます。
トップアスリートの動きを見ると、腕や足だけでなく体幹を上手に使っていることが分かります。驚異的な速さも、超人的なパワーも、生み出している源は体幹なのです。
また、いつもよりも長い時間、歩いたり、重いものを持ったりすると、疲れを感じますが、体幹を強化することによって小さなエネルギーで大きな動作が可能となり疲労感を軽減します。さらに、深い呼吸を行うことで、心肺系を強くし、スタミナのある体がつくられます。また、体中の細胞に新鮮な酸素が行き渡ることで、私たちが生きていくために必要なエネルギー(ATP)の産生が促され、筋肉だけでなく神経、脳など体のさまざまな部分が活性化されます。
<肥満の改善・基礎代謝の増加>
肥満者に対してピラティスを実施したところ、BMIや体脂肪率、ウエストヒップ比や腕周りの太さに有意な改善効果が認められたという研究報告があります。ピラティスによって、これまで上手く使われていなかったコアが刺激されたことと、呼吸運動によって血液に新鮮な酸素がたくさん取り込まれ、体全体の基礎代謝量が増加したことによるものであると考えられます。肥満の改善により、内臓脂肪の減少がもたらされます。これにより、血管の弾力性が保たれ、動脈硬化を予防することにもつながります。
また、基礎代謝量が増加することは、体温の上昇による冷え性の改善や免疫細胞の活性かなどにつながります。
<肺活量を上げる・新陳代謝が高まる>
深い胸式呼吸をすると、肺を広げたり縮めたりして、肺全体を大きく使うことができ肺活量を高めます。そうすることで、多くの酸素を取り込み、体全体に送り込むことができます。体の隅々の細胞まで酸素を送り届けることで、新陳代謝が活発になり、細胞の働きが高まります。そして、血行がよくなり新陳代謝が促進されることにより、肌や髪の毛にハリやツヤが出て、美や若さを維持することにもつながっていきます。
<骨格を強くする>
体を正しく動かすことで、骨格系では、骨の密度が高まり、骨の動きをサポートする靭帯や腱も強くなります。関節面は軟骨という柔らかい骨で覆われていますが、ここには血管が通っていません。しかし、軟骨にも酸素と栄養素が必要です。適度なエクササイズを行うことで、関節面の軟骨同士がこすれ合い、滑液(関節を潤滑する体液)の中の酸素や栄養素が軟骨に染み込み、また同時に滑液の生成も高まります。そして、関節の安定性が保たれるのです。
<ロコモティブシンドローム・フレイル・転倒の予防>
高齢期においては、体を動かすための運動器(骨・関節・筋肉など)の機能が低下し、歩くことや姿勢の保持などの生活機能低下をする、いわゆるロコモティブシンドロームのリスクが高まり、日常生活の自立度が低下することが社会的な問題となっています。こうした状態は、近年注目されている、加齢とともに運動機能が低下し、生活機能が障害され、心身の脆弱性(ぜいじゃくせい)が出現した状態である「フレイル」も意味します。また、段差のない平坦な場所でつまずいたり、狭い場所でバランスを崩したりなど、ささいなことがきっかけで転倒し骨折(とくに大腿骨の骨折)したために、寝たきりや要介護状態を余儀なくされるケースがとても多くあります。
このようなリスクを回避し、要介護を予防するためにも、無理のない範囲でピラティスを継続することが推奨されます。
ピラティスの実施により、筋肉や骨、関節の機能が維持・向上されると、ロコモティブシンドロームやフレイルの予防が可能となります。また、高齢者に対してピラティスを行った研究では、筋肉量のバランスを整えることで、立位バランスや下肢の強化、柔軟性がよくなり、転倒を予防できる効果が認められています。
<肩こりや腰痛の解消>
肩こりや腰痛のほとんどは、長時間偏った姿勢でいることや、間違った運動のパターンで繰り返し動いてしまうことによって起こり、負担のかかった部位に痛みが生じてしまいます。
ピラティスでは、筋肉をバランスよく使うことで体感を強化し、体重をしっかり支え、真っすぐな正しい姿勢を保ち、正しい運動パターンを身に付けることができるため、体への負担が軽減され、肩こりや腰痛を解消できます。
<適度な運動で深い眠りを生み出す>
ピラティスのストレッチやエクササイズを習慣化するようになると、日ごろから立ち方、歩き方、座り方などに対する意識も高まります。そして、良い姿勢を保つために、体幹やコアを中心とした筋肉を常に刺激することになるので、運動量が増加します。運動量が増加すると、適度な筋肉の疲労感が蓄積されるため、程よく休息や睡眠の欲求が高まります。眠りの浅いと感じている人は、今までよりも眠りが深くなり、目覚めがよくなることも期待できます。
日本成人病予防協会 総務省認証 学術刊行物より