ピラティス/体の柔らかい人、硬い人の違いは?

ピラティスでは、体の正しい位置を意識し動かすことで、体の柔軟性を高めることができますが、体の柔らかい人と硬い人は何が違うのでしょうか。

体の柔軟性は、関節の動く範囲の広さと動きやすさ(抵抗力の程度)に置き換えることができます。すなわち、広い範囲に少ない抵抗で簡単に関節が動くほど、柔軟性が高いということです。

柔軟性を高める要素には、大きく分けて3つあります。

1つ目は、関節の構造です。関節の動く範囲の限界は、構造的にある程度決まっています。基本的な構造はみな同じですが、多少の個人差があります。

2つ目は、結合組織の特性です。結合組織とは、筋肉や腱、靭帯など、関節の構造を支えたり、関節を動かしたりする組織のことです。年齢や性別、運動量などによって、伸びる力(伸展性)や元に戻る力(弾性)に違いがあり、柔軟性を左右します。また、一部の筋肉が発達しすぎたり、脂肪が過剰に蓄積することも、関節の動きを邪魔して柔軟性を阻害します。

3つ目は、神経の制御です。私たちは神経を通して筋肉に命令を出し、体を動かしています。例えば、膝を曲げるときには、太ももの裏側にある筋肉が縮み、表側の筋肉が伸びるように神経から命令を出します。その際、必要以上に伸び縮みをしてしまって筋肉や腱を痛めることがないようにするなど、神経は筋肉や腱が動く強さや長さを制限しているのです。この制御の範囲は、運動習慣の違いなどによって差が生じやすくなります。つまり、運動習慣があると、可動域が広がりやすくなるということです。

 

<生まれつき体が硬い人はいない>

生まれたばかりの乳児は、誰もが股関節や肩関節の柔軟性が高く、ほぼ180度の開脚が可能です。これは大人にとってとても難しい姿勢です。やがて骨格が形成されていき、2歳になるころには走れるようになり、自由に動き回れるようになってから5~6歳ぐらいまでは、柔軟性にはあまり個人差がありません。

小学生になると、外で遊ぶ子どもと家の中で遊ぶ子ども、運動が好きな子ども、嫌いな子ども、というように活動に個人差が出てきて、身体能力にも差が現れます。中学、高校と進むに従って、その差が大きくなり、運動をしない子どもは体が硬くなっていくのです。このように、体の柔軟性は主に成長過程にある学生時代に大きな差がつきます。さらに、運動量が減る社会人になると、硬くなった体を柔らかくする機会が少なくなります。筋肉が硬くなってしまう最大の原因は加齢ではなく、使わないことにあるのです。

 

<男性と女性の柔軟性の違い>

一般に、男性よりも女性の体の方が、柔軟性があるとされていますが、男性が女性以上に柔軟性を身に付けにくいということではなく、生物学的に男女の違いがあります。年齢や性別を理由にして、柔軟性のある体づくりを諦める必要はありません。

男性は加齢とともに柔軟性が少しずつ失われていくことが多いのですが、女性は60代になっても20代とほぼかわらない柔軟性を維持していることがあります。その理由は、骨格の違いと女性ホルモンの働きによるものです。

まず、男性と女性では骨盤の形が異なります。女性の方が恥骨結合下の角度が浅く、骨盤が全体的に横に広がっています。この違いは、女性は妊娠・出産をする役割を担っているからです。お腹(骨盤内)で赤ちゃんを成長させるため、女性の骨盤は広く形成され、股関節の可動域も大きくなっています。

男女で違う骨盤の形
男女で違う骨盤の形

股関節は、大腿骨の先端にあるボールの形をした大腿骨骨頭と、骨盤側で骨頭の受け皿になる寛骨臼(かんこつきゅう)との組み合わせでできた関節です。

女性では、その骨頭が寛骨臼に接触する部分が男性よりも浅いため、股関節の可動域が広くなっています。

股関節の構造
股関節の構造

また、安全にスムーズな出産を促すために、月経直後から女性ホルモンのエストロゲンの一種である「エストラジオール」の分泌量が増えます。エストラジオールには腱や靭帯を形成するコラーゲンを柔らかくする働きがあるのです。

日本成人病予防協会 総務省認証 学術刊行物より