フラと健康/下半身・体幹の筋肉強化

フラは、ゆったりとしたハワイの音楽に合わせてゆっくりと踊ることが多いため、キツイ運動には見えませんが、実は笑顔の裏でハードな運動です。

フラの基本姿勢は、常に膝を少し曲げた中腰であり、上半身は直立させた状態です。中腰姿勢を保つことで、上半身を動かすことなく、腰を優雅に動かすことができ、フラ特有の腰のスイングが可能になります。このとき、体幹は真っすぐに保持したまま、骨盤の回旋や傾斜運動が反復的に行われます。そして、上下にブレないように、姿勢を維持して踊ります。

そのため、太ももの大腿四頭筋(だいたいしとうきん)はもちろん、お尻の大殿筋(だいでんきん)中殿筋(ちゅうでんきん)など大きな部位の筋肉強化につながり、基礎代謝の増加、肥満予防にも効果的です。

 

下半身の主な筋肉
下半身の主な筋肉

また、フラは上半身があまり動かないように固定して踊るため、体幹部分にある腹直筋(ふくちょくきん)・外腹斜筋(がいふくしゃきん)・内腹斜筋(ないふくしゃきん)・腹横筋(ふくおうきん)などが鍛えられます。これらの筋肉が鍛えられると、振り付けの中でターンしたときなど、より安定したブレのない美しい踊りを行うことが可能になります。

 

体幹部分にある主な筋肉
体幹部分にある主な筋肉

●腹直筋

お腹の中心に位置する腹部では最も外側にある筋肉です。体を前方に曲げる働きをもちます。

●外腹斜筋

腹直筋の横にある斜めに走る筋肉であり、体をひねる働きをもちます。

●内腹斜筋

お腹の中央から骨盤にかけて斜めに走る筋肉であり、外腹斜筋よりも体の内側に存在します。外腹斜筋と同様に体をひねるために重要な筋肉です。

●腹横筋

腹部の最深部に位置し、肋骨と骨盤の間をコルセットのように包み込む筋肉であり、内臓を安定させる働きをもちます。

 

運動強度は、太極拳などと同程度であり1曲(3~4分)で4~6METs(注)であると報告されています。各人により運動量には差が生じ、高齢者や初心者では3~4METsであるのに対して、熟達者では4~7METsであることが分かっています。初心者では膝の屈伸が小さく、下肢筋肉群の活動が少なくなるためと考えられます。レッスンでは、各人の年齢・体力・技能に応じた配慮がなされるため、それぞれ適度なエクササイズをすることができます。

また、消費エネルギーとしては、散歩~速歩(そくほ)と同程度のエネルギー量は消費できるものと考えられますが、テンポの速い曲では息が上がるほどの体力を使います。

近年行われている研究からも、フラを踊ることで下肢の筋肉強化が認められ、その結果バランス能力が向上し、転倒防止や寝たきり予防にもつながると考えられています。また、姿勢の矯正や、柔軟性の向上なども報告されています。さらに、有酸素運動としての効果も期待でき、心肺機能向上、体力の向上にもつながるほか、継続することにより基礎代謝が増え、生活習慣病の予防効果も期待できます。ゆったりとした曲に合わせて踊れば、急激な負荷がかからないため、怪我などの心配もなく、高齢者の方でも始めやすい運動です。

 

(注)METs(メッツ)とは、運動や身体活動の強度が安静時の何倍に相当するかを表す単位で、座って安静にしている状態が1METs、陸上の普通歩行の場合は3METsとなります。

 

 

資料/日本成人病予防協会